褥瘡とは 看護師として押さえておきたい原因と予防について

 

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看護師として働いていると、褥瘡をもつ方をケアする機会は少なくありません。

褥瘡は、ケア方法が治癒に大きく影響するため、看護師として正しい知識を身に着けておくことが大切です。

この記事は、褥瘡の原因と予防について押さえておきたいポイントを紹介します。

 

看護師現場でよくある症状 褥瘡(じょくそう)とは

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看護現場でよくある症状、褥瘡。

褥瘡はケア方法によって状態が大きく変化するため、看護師として褥瘡に対する知識を身につけておくことは重要です。

この記事では、日本皮膚科学会の作成した「褥瘡診療ガイドライン」をもとに、褥瘡の原因と予防、観察のポイントについてわかりやすく説明しています。

褥瘡は一般的に「床ずれ」とも呼ばれています。

文字通り、寝ている状態で皮膚に「ずれ」などの外力がおこる環境で発症しやすくなります。

実際に褥瘡診療ガイドラインによると「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。

この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる」と定義されています。

わたしたちは日ごろ、寝返りをうったり長時間座っているときにはお尻を浮かせたりするなどして、無意識のうちに身体の同じところが長時間圧迫されないように過ごしています。

寝たきりの方や活動量が下がっている高齢者の方は、このような除圧が行えずに褥瘡ができやすくなってしまうのです。

 

看護師現場でよくある症状 褥瘡の原因

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褥瘡は、前述した摩擦や圧力といった外力のほかに、栄養低下による骨突出や皮膚の汚染・湿潤といったさまざまな因子が組み合わさって発症します。褥瘡の原因について詳しく見てみましょう。

 

外力

移動介助やベッドのギャッジアップ時には、摩擦やずれなどの動的外力が発生します。

そのほか、長時間の臥床や座位には、圧迫という静的外力がかかります。

これらの外力は、褥瘡の原因として有名です。

長時間仰臥位で過ごしている方は、仙骨部や踵部などの圧迫される部分に褥瘡が発生しやすくなります。

また、ベッドのマットレスや車椅子の座面の硬さが合っていないことも褥瘡のリスクを高めます。

寝具の重みや糊がききすぎている窮屈な寝衣も身体に外力をかけるため、注意が必要です。

 

汚染・湿潤

 

尿や便、汗などが長時間付着している皮膚は、ふやけて弱くなってしまいます。

このような汚染や湿潤がある部位に、前述した外力がかかると褥瘡が発生します。

おむつや尿取りパッドを装着している方、寝具や衣類を自分で調整できずに発汗が多い方などは、褥瘡の発生に気を付けながらケアをするようにしましょう。

 

皮膚状態

 

皮膚の状態も、褥瘡の発生リスクに大きく影響します。

皮膚の血行が悪かったり、筋肉や皮下脂肪が退化していたりすると、皮膚が弱く傷つきやすいためです。

なお、浮腫が強い方や抗がん剤・ステロイド剤の副作用で免疫力が低下している方、栄養状態が悪い方など、疾患や治療によって皮膚が弱くなっている場合にも褥瘡が発生しやすくなります。

 

褥瘡の発生原因を知りアセスメントを

 

ここまで、褥瘡の発生する原因を紹介しました。

自分で寝返りなどができないおむつを着用している患者さんは、褥瘡発生のリスクが高いことがわかります。

このような患者さんをケアする際には、浮腫や皮膚の状態を観察するとともに、栄養状態や骨突出などに問題がないかについてもチェックすることが重要です。

しかし、知識や経験の浅い看護師やブランクのある看護師は、これらの危険因子を見過ごしてしまう可能性があります。

その対策として、さまざまな病院や施設では、褥瘡予防のための評価スケールが使用されています。

「日本語版ブレーデンスケール」や、厚生労働省が作成している「褥瘡発生危険因子評価表」などが褥瘡予防の評価スケールとして有名です。

入院時や全身状態に変化がみられる際にはこのようなスケールを利用し、褥瘡になりやすい状況を身体的・環境的な側面からアセスメントすることで、充実した予防ケアにつなげることができるでしょう。

 

看護師現場でよくある症状 褥瘡の予防

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褥瘡を予防するためには、まず患者さんの状態評価をしっかりと行うことが大切です。

どのくらいの体圧がかかっているのか、栄養状態はどうかなど、これから紹介する項目を確認してみましょう。

褥瘡を予防するために有効な観察ポイントとケアについて紹介します。

 

皮膚を清潔に保つ

 

皮膚のバリア機能を維持するためには、皮膚の清潔が重要です。

患者さんの状態に合わせて入浴やシャワー浴、清拭を行い、汗で汚染されている寝衣やシーツを交換しましょう。

失禁のある方には、毎日陰部洗浄を行います。

皮膚の保護と褥瘡予防のために、保湿クリームを使用することも有効です。

 

体圧測定

 

褥瘡の予防には、まず「患者さんに現在どのくらいの体圧がかかっているのか」について知ることが重要です。

仙骨部や後頭部、踵部などの接触圧を簡易体圧測定器で確認しましょう。

接触圧が40mmHg以下であれば、褥瘡が発生しにくいとされています。

基準値を超えている場合には、次に紹介する方法で体圧分散を行いましょう。

 

体圧分散

 

体圧測定で、40mmHgを超えている場合には、体圧分散が必要です。

適切なマットレスの使用や体位変換を行う必要があります。

拘縮や姿勢によって同じ部位に圧力がかかりやすい方は、クッションを利用するなどして局所を圧迫しないようなポジショニングを行います。

体圧分散マットレスには「エア」「ウレタンフォーム」「ウォーター」など、さまざまな素材があり、さらにこれらを組み合わせたハイブリッド型もあります。

施設の基準やOHスケールなどを参考に、どういった素材が患者さんに合うか検討しましょう。

近ごろでは、一定時間ごとに自動で体圧分散を行う圧切替型の体圧分散マットレスの普及が広がっています。

褥瘡予防に有効なマットレスではありますが、2時間ごとの体位変換と合わせて使用することが推奨されているため、機能に頼りすぎないよう注意が必要です。

 

ずれ・摩擦の防止

 

前述の通り、ずれや摩擦といった外力は、褥瘡を発生する原因となります。

とくに、ベッドの頭部分を挙上する際には仙骨部や踵部に大きな外力がかかります。

必ず足部を先に挙上してから、頭部を挙上するようにしましょう。

また、骨が突出している部分に透明のポリウレタンフィルムを貼付すると、摩擦を予防できます。

実際に、仙骨部にポリウレタンフィルムを使用することで褥瘡の発生率が低下したという調査報告があり、褥瘡リスクの高い方に有効です。

 

栄養評価・管理

 

低栄養になっていると、褥瘡が発生しやすく、そして治癒しにくくなります。

患者さんの全身状態を栄養面からもアセスメントし、栄養管理を行いましょう。

まずは、体重から栄養状態を評価します。

BMI(体重kg/身長×身長)が18.5以下の方は、褥瘡のリスクが高い「痩せ」と評価できます。

また、BMIが基準値以内でも、通常の体重から急激に体重減少が起こっている方は、たんぱく質やアミノ酸、ビタミンなどの褥瘡予防に有効な栄養素が欠乏している可能性があり、注意が必要です。

 

褥瘡発生後の看護について

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日々、観察や予防的ケアを行っていても、皮膚が弱い方や栄養状態が悪い方は、褥瘡が発生してしまうことがあります。

ここからは、褥瘡発生後に看護師が行うケアについて解説します。

 

褥瘡の評価 指押し法・ガラス板圧診法

 

褥瘡を疑われる発赤が見られたら、まずは「指押し法」で褥瘡かどうかを判定してみましょう。

発赤部を指で軽く3秒ほど圧迫してから離したときに白っぽくなる場合には、褥瘡ではないと判定します。

一方で、圧迫した後にも発赤が続く場合には、褥瘡であるとの判定です。

同じ手順で、透明のプラスチック板を発赤部に当てて指で圧迫する「ガラス板圧診法」もあります。

 

褥瘡の評価 DESIGN-R

 

褥瘡が見られたら、まずは評価スケールを用いて褥瘡の状態を評価します。

褥瘡の評価には、PSST(褥瘡状態判定ツール)、PUSH(褥瘡治癒判定ツール)、PUHP(褥瘡経過評価法)など、さまざまなツールがあります。

ここでは、日本褥瘡学会が作成し、国内の病院で広く使用されているDESIGN-Rについて詳しく見てみましょう。

DESIGN-Rでは、「Depth(深さ)」「Exudate(浸出液)」「Size(大きさ)」「Inflammation/Infection(炎症/感染)」「Granulation(肉芽組織)」「Necrotic tissue(壊死組織)」「Pocket(ポケット)」の7項目について評価します。

それぞれの重症度を判定し、軽度の場合は小文字(d,e,s,i,g,n,p)重度の場合は大文字(D,E,S,I,G,N,P)で表します。

はじめは難しそうに感じる方もいるかもしれませんが、実際に使用してみると、だんだん評価のコツがつかめてきます。

褥瘡の状態をアセスメントし、優先的に対応すべきケアを判断できるよう、DESIGN-Rを使いこなせるようになりましょう。

 

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外用薬・ドレッシング材の使用

 

褥瘡をDESIGN-Rで評価したら、適切な外用薬やドレッシング材を使用してケアを行っていきます。

医師の指示に従うことが原則ではありますが、看護師も知識を持ち、日々のケアや観察に役立てていけるようにしましょう。

外用薬は、薬効成分についてだけではなく、その性状についても把握しておくことが重要です。

軟膏の基剤が浸出液を吸収してくれるかによって、褥瘡の湿潤環境は大きく変わります。

ドレッシング材も同様に、褥瘡の深さや浸出液の量などに合わせて選ぶ必要があります。

外用薬やドレッシング材の特性や作用を知って、現在行っている処置が適切であるかを日々アセスメントしていくことが重要です。

日本褥瘡学会のガイドラインには、DESIGN-Rの評価に基づいて適切な外用薬やドレッシング材を選ぶ指標が掲載されているため、参考にしてみると良いでしょう。

 

褥瘡ケアの基本 スキンケア

 

褥瘡を早く治すためには、褥瘡部分のケアばかりでなく、周りの皮膚の状態を良好に保つことが有効です。

褥瘡周囲の皮膚は、弱酸性の洗浄剤で洗い流します。

褥瘡からの浸出液が健康な皮膚に付着すると、ただれたり褥瘡が拡大してしまったりするリスクがあるため、創の周囲には保湿剤や被膜剤を塗布して保護しましょう。

 

除圧・体圧分散

 

褥瘡の部位に圧がかからないような体位を選択します。

仙骨部に褥瘡がある方は、摩擦やずれを防ぐために、ベッドの頭部分は30°以上にしないよう注意しましょう。

また、体位変換のたびに、介護者の前腕や手のひらを患者さんの身体とベッドの間に入れて滑らせる「背抜き」も有効です。

 

看護師が注意したい褥瘡好発部位とは

 

一度発生してしまうと患者に痛みや不快感を与え、治癒するまでに時間がかかる褥瘡は、予防的ケアが重要です。

褥瘡の予防における基本は、毎日の観察です。

骨が突出し、体圧が集中する部位に褥瘡はできやすいことを紹介しましたが、褥瘡の好発部位を把握しておくことで、専門性をもちながらも効率的に観察できます。

褥瘡の好発部位は、体位によって異なります。

対象となる患者さんが、普段どのような姿勢で過ごしているかを注意して観察しましょう。

仰臥位では、仙骨部の発生が最も多く、続いて踵骨部、後頭部が好発部位です。

側臥位では、肩関節部や太ももの付け根外側の大転子部、くるぶしの外果部に発生しやすくなります。

また、寝たきりではなくても車いすやいすに長時間座っている方は、仙骨部に限らず坐骨結節部や尾骨部にも褥瘡が発生しやすくなります。

 

まとめ

 

看護師にとって必要な基礎知識である褥瘡の原因や予防について解説しました。

新しい体圧分散寝具や外用薬・ドレッシング材の開発が進み、褥瘡ケアは日々進化しています。

この記事で紹介した褥瘡発生のメカニズムや予防方法の知識をベースとして、今後も新しいケア方法や製品情報を収集しながら、看護の現場で活かしていってください。

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