サルコペニアとは 症状と適切な看護方法について

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サルコペニアは加齢やさまざまな疾患が引き金になる病気です。

サルコペニアについて正しい知識を持っていなかったり、必要な看護が何かを知らなかったりする方も少なくありません。

この記事ではサルコペニアの病態・症状・看護計画を立案するときのポイントを解説します。

 

看護師が押さえたい サルコペニアとは

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サルコペニアという言葉を聞いても分からない方や、言葉は知っていても症状や看護方法が分からない方はいるでしょう。

漠然とした知識では正しいサルコペニアに対する看護はできません。

まずは、サルコペニアの症状・看護方法を解説します。

サルコペニアとは筋肉量が減少する病気のひとつです。

サルコペニアは2種類あり、加齢が原因の「一次性サルコペ二ア」 と、原因が加齢ではなく疾患・活動量・栄養状態などが原因の「二次性サルコペニア」です。

詳しくは以下の表をご覧ください。

 

種類 状態
一次性サルコペニア
  • 加齢性:加齢以外に原因がない
二次性サルコペニア
  • 活動量に関連:活動量の減少・寝たきり・無重力状態
  • 疾病に関連:炎症性疾患・心臓や肺などの重症臓器不全など
  • 栄養に関連:消化器疾患・摂取量不足など

 

筋肉量が減少すると、歩く・立ち上がるといった日常生活の動作がしづらくなります。

サルコペニアは40歳から徐々に筋肉量が減少し、70歳で「足が上がらなくなった」「歩くだけでも疲れやすくなった」などと自覚します。

性差で見ると女性よりも男性が多く現れることが特徴です。

加齢以外でサルコペニアになるメカニズムは、栄養不良や癌などの病気や、甲状腺機能異常や脳の病気などの影響でホルモンが正常に分泌されなくなることが原因です。

サルコペニアは、筋線維数と筋横断面積が同時に減少することが特徴のひとつです。

筋繊維数と筋横断面積ついては以下をご覧ください。

 

• 筋繊維数:筋肉は1本1本の繊維でできていてその繊維の数は個人差がある
• 筋横断面積:筋を輪切りにしたときの面積

 

筋繊維数と筋横断面積で筋力が決まります。

サルコペニアには重力に逆らって体勢を保持するために働く抗重力筋も重要です。

たとえば、抗重力筋は以下の4つです。

 

• 広背筋:肩甲骨の下から腰まである筋肉
• 腹筋:腹部にある筋肉
• 膝伸筋群:膝関節を伸ばす筋肉
• 臀筋群:尻を形成している筋肉群で大臀筋・中臀筋・小臀筋がある

 

どの筋肉も大きな筋肉で、それぞれの場所で体を支えています。

サルコペニアと結果は同じフレイ ルがあり、違いは以下を参考にしてください。

 

状態
サルコペニア 体の機能が低下
フレイル 精神的にも衰弱している

(体重減少・疲れやすい・身体活動の低下など)

 

抗重力筋が衰えると、日常生活の動作が億劫になります。

「億劫だな」と感じると、活動量の減少と比例して筋肉量も減少し歩行困難につながります。

対策をしなければ寝たきりになる可能性があるため、簡単な運動を取り入れることが大切です。

サルコペニア予防のためにレジスタンス運動を試してみましょう。

レジスタンス運動の目的は、筋肉に負荷をかけることです。

高齢者の場合、筋肉量と筋力量を増やすことを中心にトレーニングを行いましょう。

たとえば、ふくらはぎの上げ下げや太もも上げなど簡単なメニューがおすすめです。

栄養不足や疾患が原因の場合は、それぞれの原因に適した対応をしましょう。

栄養不足が原因の場合、食事量を増やしたり栄養不足になっていたりする原因にアプローチします。

明らかに疾患が原因のときは、医師の指示に従い治療しましょう。

サルコペニアの可能性を疑う症状は下記を参照してください。

 

• 転びやすくなる
• 頻繁につまずく
• 歩くスピードが遅くなった
• 青信号の間に横断歩道を渡りきれなくなった
• ペットボトルのキャップが開けにくくなった
• 短距離の移動や立っているだけでも疲れやすくなった
• 階段を上がるとき手摺がないと大変になってきた    など

 

どの症状もサルコペニアでなくてもありえます。

そこで、下記のセルフチェックを追加で試しましょう。

 

チェック名 特徴 チェック方法
ふくらはぎの太さチェック
  • ふくらはぎは筋肉量が落ちやすい
  • 体格に対して筋肉量が適正かわかる

※ただし、むくみや脂肪と判断できない

 

  1. 椅子に座り足の裏をしっかり付ける
  2. 利き足ではない足のふくらはぎを、両手の親指と人差し指で作ったわっかで囲う
  3. わっかとふくらはぎの隙間で評価する
片足立ちでチェック
  • 開眼片脚立位テストと呼ばれている
  • 立っていられる時間で評価する
  • 15秒未満のときはサルコペニアの可能性が高くなる
  1. 転倒しないように掴まれる物を用意して、不要な物は片づける
  2. 滑りづらい床の上に素足で立つ
  3. 腰に両手を当てる
  4. 片足を床から5cm程度の程度あげて、60秒キープ
歩行スピードでチェック
  • 4mを歩きその間の歩行速度で判定する
  • 0.8m/秒以下は要注意
  1. 6mの距離で行う
  2. 1mと5mの地点に印を付ける
  3. 1mから5mの間を歩いた時間を測定する

 

それぞれの違いを知り、サルコペニアを正しく理解して看護につなげましょう。

 

看護師が押さえたい サルコペニアの症状

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サルコペニアはさまざまな症状があります。

ここでは、身体機能・筋力低下・筋量減少に分けて解説します。

 

サルコペニアの症状①身体機能低下

 

サルコペニアの症状の一つに身体機能低下があります。

身体機能が低下したときに感じる症状は主に以下の3つです。

 

症状 状態
階段の昇降が辛くなる
  • 臀筋群と太ももの裏にある筋肉を使い股関節を動かしている。
  • サルコペニアになると臀筋群と太ももの裏にある筋肉が衰えるため
動くこと全般が億劫になる
  • 加齢とともにさまざまな疾患にり患したり、気力が衰える
  • 億劫だからと言って外出したり自宅内での活動量を少なくしたりすると、全身の筋力が低下
  • 握力・脚力などに影響
横断歩道が時間内に渡りきれなくなる
  • 同じ横断歩道を使っていても、時間内に渡り切れなくなる

 

いずれの症状も加齢と共に自覚しやすかったり、周囲に言われて気づいたりする方がほとんどです。

身体機能が低下すると活動量が低下し、QOLに影響したり、気分転換が不十分になったりします。

カロリーが消費できない・気分が沈むなどの不都合が出るため、適度に活動できるように筋肉量を維持することは大切です。

 

サルコペニアの症状②筋力低下

 

筋力低下はサルコペニアの症状のひとつです。

サルコペニアで筋力低下になった場合の症状の種類と状態は以下の通りです。

 

症状 状態
骨粗しょう症
  • 骨粗しょう症になると骨折しやすくなり、骨折をするとそれまでのように活動できなくなることがある
  • 活動をしなくなり食事量が低下し、骨粗しょう症が進行する
冷え性
  • 筋力が低下すると熱産生が減少したり、血液循環が悪くなったりして体温が低下する
糖尿病
  • 活動量が低下することで摂取カロリーに対して消費カロリーが少なくなり糖尿病になる
  • サルコペニアになることで姿勢を支えたり血糖コントロールをしたりしている骨格筋が弱くなる
熱中症・脱水
  • 筋肉量が低下することで水分保持力も低下する
体重減少
  • 筋肉量は体重の40%を占めていて、筋肉量が減少すると体重が減少することもある

 

年齢を重ねると太りやすくなったり、さまざまな疾患の可能性が出たりと悩みは尽きません。

悩みの対策方法のひとつとして、食事制限を選択する方がいるでしょう。

食事制限をしすぎてしまうと十分な栄養を摂取できなくなり、パワーが不足し活動量と筋力低下につながります。

また、筋肉量が低下すると冷え性や脱水、体重が減少することもあります。

そのため、生活習慣病にならない程度の食事と活動しましょう。

基礎疾患がある方は、医師の指示の従い運動や食事コントロールをしてください。

 

サルコペニアの症状③筋量減少

 

筋量が減少すると筋力が低下しますが、筋力は活動するためには欠かせません。

筋量が減少するとサルコペニアの症状がでるため、どのような症状か把握しておきましょう。

 

症状 状態
バランスが悪くなる・転びやすくなる
  • 筋力が低下することで体を支える力が無くなる。そのため、バランスが悪くなったり転びやすくなったりする
立ち上がるのが難しくなる
  • 立ち上がる動作が難しくなるだけではなく、活動量も低下する
力が必要な作業ができない
  • 瓶やペットボトルの蓋を開けられなくなる
  • 補助具が必要になる
疲れやすい
  • 筋量が減少することで、常に自分自身にある最大限の力が必要になり疲れやすくなる

 

活動することに支障をきたすため、サルコペニアを予防することは大切です。

 

サルコペニアの看護計画はどう組むべきか

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サルコペニアはそのままにしておくと進行するため、さまざまなアプローチが必要です。

サルコペニアの看護計画を立案するときは、サルコペニアの特性を考慮しましょう。

看護計画に必須の内容は「運動」と「栄養」です。

サルコペニアの症状は身体機能低下・筋力低下・筋量減少で、運動をして鍛えることが重要です。

運動をするとカロリーを消費でき、運動すると気分転換になります。

運動を看護計画に入れる場合、患者の状態によって内容を変更しましょう。

激しい運動ではなく、必要な筋肉に負荷を与えるメニューがおすすめで、散歩・もも上げ・かかとの上下運動です。

散歩は歩幅を広くしたり歩くスピードを速くし、もも上げはしっかりとももを上げる、かかとの上下運動は体を持ち上げることを意識することがポイントです。

 

もも上げは以下の手順で実施しましょう。
1. 椅子の横に立つ
2. 椅子側の手を背もたれに乗せる
3. 片足だけももからしっかりと上げる
4. ゆっくりとももを下ろし、床につく寸前で止める
立っていることが不安な場合は、椅子やベッドに座って行ってください。

 

かかとの上下運動です。
1. 椅子の後ろに立ち両手を背もたれに乗せる
2. かかとを高く持ち上げる
3. ゆっくりかかとを床に付く寸前まで下ろす
痛みがある場合は痛みが強くならないようにしたり、倒れそうになったとき掴まれるようにしたりと配慮しましょう。

 

運動を実施する前は必ずバイタル測定を行、体調が悪いときは、その日の運動を中止することが大切です。

栄養面では食事をバランスよく摂取することが大切です。意識して摂取する栄養素は以下の通りです。

 

栄養素 効果 含まれる食材
ビタミンD
  • 骨粗しょう症に効果あり
  • 筋力増強
  • 転倒予防
  • 骨折予防
  • 干しシイタケ
  • いわし
  • サンマ

※日光浴もおすすめ

タンパク質、アミノ酸
  • アミノ酸は筋肉を作るタンパク質に必要
  • 必須アミノ酸の中でもバリン・ロイシン・イソロイシンが重要
  • たらこ
  • チーズ
  • まぐろ
  • 牛乳
  • 大豆類
  • 鶏むね肉
ビタミンB
  • 特にビタミンB6は筋肉を合成する上で重要
  • ピーナッツ
  • 牛や豚
  • 鶏のレバー
  • 魚の赤身  など

 

ただし、食事量が少ない患者に対する看護計画では、まずは、食べられるように促す計画を立案しましょう。

しっかり食べて必要なカロリーを摂取できることが大切です。

 

まとめ

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サルコペニアは誰でもなる可能性がありますが、予防することも可能です。

そのため、正しく病態と、予防するために必要な知識を身に着けることが大切です。

看護計画を立案する際は、患者の体調や状態をしっかりと観察をして個別性を考慮して立案しましょう。

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