発達障害を持つ患者さんへの適切な関わり方・看護方法とは

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発達障害を持つ患者さんとの関わり方に悩む方も多いのではないでしょうか。

また、発達障害の患者さんと関わった経験が無く上手に関われる自信が無いと感じる方もいるでしょう。

この記事では、主な発達障害の種類や適切な関わり方、看護計画についても解説していますので、発達障害を持つ患者さんの看護に興味のある方はぜひ参考にしてみてください。

 

看護師が押さえたい 発達障害とは

 

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発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達に関係する障害です。

主に遺伝的要因の関係が指摘されていますが、環境要因(いじめや虐待など)が原因とされることもあります。

発達障害を持つ人は、対人関係を築くのが苦手です。

外見からは障害の有無がわからないことも多く、発達障害の持つ人の言動が「自己中心的」「関わりにくい人」と誤解されてしまうことも少なくありません。

また、その誤解により傷ついた経験のある方も多いということも関わるうえで忘れてはいけません。

発達障害を持つ人の環境の調整や特性に合ったサポートをしていくことで、生きにくさや社会生活においての様々な困難は軽減されると言われています。

発達障害を持つ人は周囲の環境や他者の協力により、〝生きやすさ“がいい方向に変わっていくのです。

 

看護師が押さえたい 発達障害の種類

 

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主な発達障害の種類は、自閉症スペクトラム障害(ASD)・ADHD(注意欠損・多動性障害)・学習障害(LD)があります。以下、それぞれの特徴について記載していきます。

 

自閉症スペクトラム障害(ASD)

 

自閉症スペクトラム障害とは、他者とのコミュニケーションにおいて、言葉や視線、表情などの非言語的コミュニケーションが苦手であったり、自分の気持ちを伝えたり相手の気持ちを読み取ったりすることが苦手であるといった特性があります。

また、ある物事に強いこだわりを持っていたり、感覚が過敏であったりすることもあります。

自閉症スペクトラム障害の子どもの特徴的な行動としては以下のようなものがあげられます。

 

  • 「あやしても目が合わない、反応が乏しい」
  • 「親の後追いをしない」
  • 「妙に大人びた言葉遣いをしたり、棒読みな話し方をする」

 

また、こだわりの強さから「地図や昆虫など特定のものに強い興味を持つが、その範囲は狭く興味のないことに対しては一切の興味を示さない」ことや「1つのことに集中しすぎて周りがみえなくなる」などの行動がみられます。

そして、感覚の偏りや運動が苦手であるなどの特性もあり、子どもながらに「生きづらさ」を感じることがあります。

一方で、友達よりも記憶力が高かったり一定の物事に対してより知識を持っていたりと、得意なこともあるため、得意なことを伸ばすサポートをしていくことで生きづらさを軽減することができます。

”障害”とひとくくりにするのではなく、まずは”個性”として周囲の人が受け入れ良い部分を伸ばすサポートをしていくことが大切です。

 

自閉症スペクトラム障害の大人の特徴的な行動としては以下のようなものがあげられます。

 

  • 「集団生活の中で空気を読むことが難しい」
  • 「コミュニケーションが苦手で、人間関係がうまくいかない」
  • 「自分のペースがあり急な予定変更があるとパニックになってしまう」

 

自閉症スペクトラム障害は、知的障害の有無によっても障害の発覚時期が変化することがあります。

知的障害を伴わない自閉症スペクトラム障害は、知的発達の遅れがないため診断を受けずに大人になることが多いとされています。

そして、大人になり社会に出たことで困難が生じ、違和感を感じるようになります。

その違和感が生きづらさに直結してしまい、心を病んでしまうことも少なくないのです。

大人の自閉症スペクトラム障害の場合、抽象的な表現は苦手であるため職場や友人が具体的な表現をしたり、情報の共有に文章など目に見えるものを使用したりすることでお互いのコミュニケーションが円滑にいくことがあります。

周囲に障害を伝え理解してもらうことで、生きづらさを軽減することができます。

 

ADHD(注意欠如・多動性障害)

 

ADHDとは、「不注意」「多動性」「衝動性」が主にみられる発達障害です。

不注意の特徴的な行動としては以下のようなものがあげられます。

 

  • 「注意力・集中力が長続きせず、気が散りやすい」
  • 「物事を順序だてて行動することが難しく、約束の時間や納期を守れない」
  • 「忘れ物や無くし物が多い」

 

ADHDは男性に多い(男女比およそ3:1)といわれています。

多動性の特徴的な行動としては以下のようなものがあげられます。

 

  • 「授業中に座っていられず立ち歩いたりどこかへ行ったりしてしまう」
  • 「落ち着きがない」

 

衝動性の特徴的な行動としては以下のようなものがあげられます。

 

  • 「順番を守れず割り込みをしてしまう」
  • 「思いついたことを考えるよりも先に即座に行動にうつしてしまう」

 

ADHDには種類があります。

 

1つは不注意の特徴が強く現れるタイプです。このタイプは、不注意の特徴に比較し多動・衝動性に特徴があまりみられません。

2つ目は多動・衝動性の特徴が強く現れるタイプです。このタイプは逆に、多動・衝動性の特徴に比較し不注意の特徴があまりみられません。

3つ目は全ての特徴を持ち合わせるタイプです。

 

このように、一概にADHDといっても種類があるためひとくくりに関わることはできません。

また、成長に伴いその特徴が目立たなくなることもありますが、成長しても全てが無くなるというわけではありません。

ADHDを持つ方のタイプや年齢によっても関わり方を変える必要があるのです。

 

学習障害(LD)

 

学習障害とは、基本的に全般的な知的障害や視聴覚に障害がなく、聞く、話す、読む、書く、計算する、または推論する能力のうち特定のものに発達の遅れがみられる状態のことを言います。

知的障害や視聴覚に障害がないことから、周囲から本人の問題であると誤解されることが多い障害でもあります。

学習障害は小学生になり授業を受け始めたタイミングで発覚することが多いです。

学習障害を持つ人は、学齢期で5~15%、成人で約4%とされています。

そのため、学齢期では各クラスに数人学習障害を持つ子がいるということです。

また、学習障害には種類があります。読字障害(ディスレクシア)、書字表出障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)の3種類です。それぞれについて説明します。

読字障害は、学習障害の中で一番多くみられます。文字の読み書きに限定した困難があります。

読字障害の特徴として、文字を一つ一つ区拾って読む(そのため音読が遅くなる)、文字間や行間が狭いとさらに困難さが増してしまう、などということがあります。

書字表出障害は文字を書くことに対して障害があります。

また、書字表出障害は読字障害に伴って出現する場合もあります。

書字表出障害の特徴として、文字がマス目から大きくはみ出してしまう、年相応の漢字を書くことができない、句読点が上手に使えない、などがあります。

読字障害を伴う場合は、読み書き両方に困難さがあります。

算数障害は計算や推論をすることに対して障害があります。

算数障害の特徴として、数の大小や順番を理解できない、いつまでも数字を指折りで計算する、などがあります。

算数の授業で障害が発覚することが多いですが、日常生活でも数を数えられないことで発覚することがあります。

学習障害が大人になってから発覚するケースもあります。

それぞれが授業の得意・不得意があるため、障害ではなく「不得意」として気付かれないことがあるからです。

大人になり仕事を始めたタイミングで学習障害が発覚する場合もあるのです。

 

発達障害の看護計画・適切な関わり方について

 

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発達障害の看護計画や適切な関わり方について説明していきます。

まず、発達障害は、上記で述べた障害だけでなく頭痛や腹痛など心因性と思われる身体症状を伴いやすいです。

また、倦怠感や抑うつ症状、攻撃性を伴う場合もあります。以上のことから、全体的なサポートが必要とされていることがわかります。

例)♯1 発達障害に伴う身体症状による安楽障害

看護目標
身体症状に対し対症療法を行い症状を軽減することで、日常生活のQOL(クオリティーオブライフ)を上げることができる。

OP(観察項目)
・バイタルサイン
・摂食障害の有無(心因性)
・身長体重
・苦痛表情の有無
・身体症状の有無(倦怠感やチックなど)
・家族との関わり方
など

TP(ケア項目)
・受容的、共感的な態度で思いを受け止める。
・発言や行動を否定しない。
・本人や家族の努力を認める。
・必要時医療ケアの介入。(摂食障害に対する治療や服薬など)
・本人・家族それぞれの思いを表出できる場所を設ける。
など

EP(教育項目)
・学校や地域と連携をし早期にサポートが介入できるよう支援する。
・本人・家族がどんな目標を持っているか都度確認しその目標を設定する。
・周囲の人へ障害について理解してもらえるよう情報提供し、多方面からサポートを受けられるよう支援する。
など

 

発達障害の看護研究

 

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発達障害を持つ人との関わりについての看護研究を記載します。

・発達障害をもつ人への看護の実態に関する文献的考察
(木戸久美子、林隆 山口県立大学 看護栄養学部 創刊号 2008年3月)
・発達障害児に対する看護実践に関する研修プログラムの開発
-短期的効果の検証-
(浜松医科大学 坪見利香 障害理解研究18 2017年1月)
・発達障害児とその家族に対する地域支援に関する研究についての文献検討
(草野恵美子、鳩野洋子、会田加代子、中山貴美子 大阪医科大学看護研究雑誌 第10巻 2020年3月)
・発達障がい児をもつ家族に関する文献検討
-心理社会的な問題に関する研究の動向と課題-
(宮内環 小児保健研究 第2号 2012年)
・医療機関における発達障害児への看護の課題に関する文献検討
(玉川あゆみ、古株ひろみ、川端智子、渡邊香織 滋賀県立大学 人間看護学部 人間看護研究 2015年)

 

まとめ:看護師として発達障害に向き合う

 

発達障害といっても、ひとりひとり障害の種類や程度が変わってくることが理解していただけたと思います。

発達障害が発覚し早期にサポートを受けられた人もいれば、大人になるまでサポートを受けられず「怠け者」「落ち着きがない人」として誤解されて生活してきた人もいるのです。

目の前にいる‟今”の状態だけでなく、“過去”にどんなことがあったのか、どんなことに苦しんできたのかを理解しようとすることが大切です。

私たちが介入しようとして、拒否されて落ち込むこともあるかもしれません。

ですが、その際には「なぜ拒否しているのか」を一度立ち止まって考えてみてください。

発達障害を持つ人は、私たちよりも理解されずに傷ついた経験や拒否された経験が多いかもしれません。

受容的や共感的な態度を持ち続け、時には静かにそばにいるだけ、など時間を共有することで相手の気持ちが変わることがあります。

発達障害のある人は、他の人が当たり前のようにできることに対し困難さを感じる事があります。

ですが、できないことばかりではなくできることも沢山あるのです。

本人はできないことに目を向けて落ち込むかもしれません。

そんなとき、私たちはできていることを肯定し、できないことに対してはどうすればもっとよくなるのかを一緒に考え、具体的に伝えていきましょう。

できなかったことが少しできるようになったとき、自信につなげることができます。

もちろん、得意なことを伸ばすサポートも大切ですが、本人が望んだ際に不得意なことを少しでもできるようにサポートすることも本人の生きやすさに繋がるため大切になってきます。

サポートするうえでは家族支援も欠かせません。

まずは家族に障害を理解してもらうことで、本人・家族の信頼関係が変わってきます。

発達障害のある人の家族は、子育てに苦労した経験があったり、自責の念があったりします。まずは私たちが家族の苦労を理解し受け入れること、努力を認めましょう。

発達障害のある人にとって、一番身近である家族に理解されることは安心できる環境があるという安心感につながります。

安心感は、ストレスを軽減しますのでとても大切になります。

家族や私たちが絶対的な見方になることで、本人の苦痛軽減や自信につながり生きやすさにつなげることができるのです。

発達障害のある人のサポートは、「難しい」「自分にはできない」と思われるかもしれませんが、障害の有無はありますが初歩は「人」と「人」との付き合いです。

まずは人として理解し関わる姿勢を忘れないことでみつけられることがあるかもしれません。

あなたも、発達障害のある人のサポート人として一歩踏み出してみませんか。

ここまでの内容をまとめ、読み手と想定される看護師の方々に正しい知識をもって看護の現場で活かしてほしいことを伝えてください。

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